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Bringing Up Bobby リセット

アメリカ映画 (2011)

11才のスペンサー・リスト(Spencer List)とミラ・ジョヴォヴィッチ(Milla Jovovich)がタッグを組んだロード・ムービー。女詐欺師と、時々その手伝いもする少年という組み合わせは、男女が逆転するが、『ペーパー・ムーン(Paper Moon)』を思わせる。ただ、映画の出来は相当に落ちる。救いは、何と言ってもスペンサー・リストの愛らしさ。ジョヴォヴィッチは、『バイオハザード』シリーズで女闘士というイメージが強いが、ここでは一転して坊やに甘々のお母さんぶり〔違和感は否めない〕。そして、そのお母さんにべったりなのがスペンサー。こんなに甘えていいのだろうかと思うくらいの甘えん坊だ。残念なことは、日本語の題名が悪く〔「リセット」では何のことやらさっぱり分からない〕、しかも、宣言ではジョヴォヴィッチが全面に出てしまったので、子役としてのスペンサーに見とれた人は少ないのではないかと思われる。

ボビーは、ウクライナ移民でシングルマザーの母に、軽犯罪を遊びのように教えられて毎日を送っている。だから、ボビーには罪の意識は全くない。母に十分に甘え、伸び伸びと育っている。そこに故買屋のウォルトが絡み、さらに、ボビーを交通事故で骨折させた大金持ちのケントが絡む。その時、母が軽犯罪で逮捕・収監され、ボビーを施設に入れないため、ケント夫妻が養子として面倒を見ることになる。しかし、母が出所すると、善悪の区別のつかないボビーが幾つも失敗をしてしまう。それを見て将来を心配するケント夫妻、そして、ボビーの母。結局、母は最愛の息子の将来のためを思って、身を引くことを決意する。

スペンサー・リスト。甘えん坊の雰囲気や表情は、『チャンプ(The Champ)』のリッキー・シュローダー(Ricky Schroder)が一番近いかもしれない。ただし、あんなに可哀想な場面はなく、楽天的な愛らしさに溢れている。ジョヴォヴィッチがウクライナ訛丸出しなのに、スペンサーは流暢な英語。違和感は否めないが、可愛いから許せてしまう。


あらすじ

中古車の試乗シーンから、映画は始まる。ボビーは、「いいね、ママ、クールだ」「宇宙船みたい」とご機嫌だ。そして、母が、同乗の店主にお名前はと訊き、話し方がジェームズ・ボンドにそっくりとおだてると、ボビーの顔がはじける。実にあどけない笑顔だ。店まで戻ってきて、値段を尋ねる。5980ドル。すごく安い。ボニーとクライド(1930年代の有名な強盗カップル)のマネをして、「どう思う、クライド、気に入った?」と訊く母。「とってもさ、ボニー」とボビー。そして、すかさず笑いながら「もらっちゃう?」。「何でも、言う通りに」。運転席で喜んで飛び跳ねるボビー。唯の冗談だと思った店主は、「そいつはいい考えじゃないぞ、坊や」と諌めただけ。店主が売却の手続きに行っている間に車に乗ってバイバイ。快調な滑り出しだ。
  
  

車は故買屋のウォルトのガレージに直行。ボビーとは初対面。追っ手はないなかとビクビクするウォルトを見て、窓まで見に行って「警察」と叫ぶボビー。慌てて隠れるウォルトを見てニンマリ。さらに、GPSは外したかと訊くので、母が「もちろんよ」と答えると、すかさず「ドジこくはずないじゃん」。だんだん腹が立ってきたウォルトは、「オクラホマじゃ、不愉快な奴は、不快な目に遭うぞ、マヌケ」。ガンつけるボビー。この2人最後まで相性が悪い。母とボビーは新居へ。寝室は2つ。「どっちのベッドがいい?」。「こっち」と言って、大きい方の部屋を選んでベッドの上で跳ねるボビー。「捕まえたぞ、わんぱく坊主!」と母も一緒にベッドに。仲良く向かい合って寝転がる。「こんなのフェアじゃない」。「人生はフェアじゃないの」。ボビーが「お腹空いた」と言うと、母は、急に映画の台詞を。いつもの題名当てクイズだ。ママの『風と共に去りぬ』を当てた後、ボビーが立ち上がって『パイレーツ・オブ・カリビアン』をやる。楽しい母子だ。
  
  

翌日、ちょっと “もらった” 後で家に戻ると、家の前に変なおじさんが。ボビーの行動に文句をつけにきた宗教狂いの隣人だ。カトリック信者を装って上手に追い払う母。次に来たのがウォルト。今夜の詐欺の相棒だ。しかし、ボビーはウォルトをバカにしているので母が一緒に出かけることに乗り気でない(詐欺に行くとは知らない)。ドアを開けてあげなさいと言われ玄関へ。扉のガラス窓を開け、バイクヘルメットを被った姿を見て、「ママ、エイリアンが迎えに来てる」。「黙れ、毒虫」。「一晩中被ってたら?」。ウォルトが、「もし俺のガキだったら」といって、手でパチンと潰す振りをふる。「子供じゃなくて良かった」。そして、母とウォルトは出かけて行った。その後、ボビーは、ウォルトが置いていったバイクを、迷惑駐車だと電話して撤去させてしまう。
  

地域の有力者の集いで、アフリアの貧しい子供たちに援助を、という寄金詐欺を2人でやった後、母は家に帰る。朝、ボビーが眠っているベッドに入り込んで、朝のキスをする母。ボビー:「いつ帰ったの?」。母:「覚えてないの? 話したじゃない」。「覚えてない」。「撤去されたバイクのことも?」。「してないよ」。「こら、この嘘つき」と言って、くすぐる母。ボビーの甘ちゃんぶりがひしひしと伝わって、くすぐったいようなシーンだ。
  
  

ベッドを飛び起きると、ボビーはスケボーをやりに外へ。家の前の道路で、近所の子供たちと遊んでいる。そこに1台の車がさしかかり、ボビーは撥ね飛ばされる。病院に運ばれるが、足を折っただけの軽症で済んだ。運転をしていたのは地元の大手不動産会社の社長。母と一緒に病院へお見舞いに。部屋に入るなり、ボビーに駆け寄る母。心から大好きなのがよく分かる。母の心配をよそに、ボビーは「もっと大きな車にぶつからないと」とケロり。その時の表情がいい。看護婦さんもメロメロだ。「悪かった。見えなかったんだ」と謝る社長に、「大きくへこんだでしょ」。そして、社長の名前がケントだと分かると、「クラーク・ケント、スーパーマン?」とおどけてみせる。しかし、母と2人きりになると、「行かないで」「疲れたちゃった」「愛してる」と言ったあとで、「ママ、パパは僕のせい?」と訊く。ここで、母が離婚したことが分かる。
  
  

ボビーの足も完全に治り、2人でボーリングをしている時、警察が入って来る。今までやってきたどれかの犯罪がバレたのだ。ボビーの前で逮捕される母。「ママ、どこに連れてかれるの?」と2度叫ぶボビー。生まれて初めて母と引き離され、涙にくれるボビー。
  

母が収監されている間、施設に入れられたボビー。そんな母子に手を差し伸べたのは、ケント夫妻だった。弁護士と相談し、ボビーの前父に養育の意志がないこと、ウクライナの父母には引き取れないことを確認した上で、養子にすることを申し出る。そして、更正して定職につけば、母も面会もできるようになるとも。施設に入れられるよりはと、申し出を受ける母。そして、養子縁組の調停で互いに向き合い涙する母子。会話のない、映像だけのスマートなシーンだ
  
  

8ヶ月後、出所した母。ウォルトに迎えられ、ケントの家に。そこでは、ボビーが、ケント夫妻と楽しそうに野球をしていた。突然現われた母に抱きついて喜ぶ。最高に幸せそうなボビーの表情。何ともたまらない(2枚紹介)。次の日には、母の家(ウォルトの「廃棄された鉄道車両」に仮住まいしている)まで行くことに。その前に、ケント夫人が母に打ち明ける。「すごく愛くるしい子ね。夫とも大の仲良し。見てるだけで楽しいわ。あんなことの後で、こんな日が来るとは思いもしなかった。ジェイミーは今のボビーと同じ年頃だったの」。
  
  

何とかボビーを取り戻したい母は、仕事を探すが、トイレ掃除をクビになった後は、洋品店の宣伝をする“歩く広告塔”しかない。一方、ボビーが入れられた私立の男子校では、「お前の母は前科者だ。てことは、お前は前科者の子、ホモ野郎だ」。「汚らわしい」。「なあ、お前のママと寝てやろうか」と罵られ、ケンカに。車で迎えにいったケント夫人は、ちょうどボビーの母が広告塔をやっている所にさしかかり、慌ててボビーの目を逸らしてやる。
  
  

ケント夫人は、その夜、夫に、ボビーの母がホームレスの施設に泊まっているのでゲストハウスに泊めたいと切り出す。ボビーのことが心から気に入っていて、そのボビーを産んでくれた母親に対して、感謝の意味から家に招き入れようというのだ。しかし、これは思ったのとは逆の結果を招来してしまう。朝、ボビーが母のいる部屋にやって来て、誰もいないことを確かめると、服の中に隠したケント夫人の赤い服を自慢げに出して、「ほら、赤ちゃん」と言って渡そうとする。「盗んだの?」。「もらっただけ」。ボビーには、“steal”と“take”の区別がつかないのだ。「ダメよ」。「なぜ? やってたじゃない」。「これは違うの」。「どこが違うの。喜ぶと思ったのに」。こっそり戻そうとバッグに入れる。しかし、母が返しに行った時、バッグからはみ出していたドレスが見つかり、当然、彼女が盗んだと思えわれてしまう。
  
  

一方、学校では、かつての公立学校の落ちこぼれ親友に授業中に呼び出され、そそのかされて、銃を持った半狂乱の男が学校にいるので助けて、と電話をかけてしまう。特殊部隊が駆けつけて大騒ぎとなる学校。ヤバいから逃げるぞと言われ、結局一人だけ捕まってしまう。警察に呼び出された母とケント夫妻。ボビーは11才なので罪には問われないと告げられる。しかし、母だけ残され、ボビーの行動が犯罪者の子供特有のもので、将来刑務所行きになる可能性も高いと警告される。そして、ボビーの親としては相応しくない、とも。
  
  

その夜、ケント夫妻が、ボビーを手放すか、ボビーの母をどうするかで口論をしている。それを耳にはさんだ母は、ボビーを夫妻に託して自分は去っていくことを決意する。そして、そのことを分かりやすく伝えるため、ボビーに優しく語りかける。「あなたは特別なの。ジェダイ・ナイトになる準備をするの。でも、それには、別の両親が必要。ママと離れるの」。「イヤだ。どうして?」。「それがジェダイの決まりなの」。「だから出ていくの?」。「定めよ」。「ずっと?」。「いいえ、少しだけ。それはね、ママも女性のジェダイ・ナイトになる学校に行くからなの。そして、世界に平和をもたらすの」。「そう… 戻ってくると約束して」。「約束するわ、必ずよ。あなたなしでは生きられないもの。でも、これが最善の方法なの。分かった?」。「愛してるよ、ママ」。「とっても愛してるわ、可愛い坊や。何よりも愛してる。他の何よりも」。
  
  

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